ED(勃起不全)の種類と原因は?基礎知識からセルフチェック、治療法を紹介

勃起不全(ED)

「勃起が途中で萎えてしまう」「十分な硬さにならず性交渉が続けられない」といった悩みは、年齢やライフスタイルを問わず多くの男性に共通します。
国内では四十代以降で急激に有病率が高まり、推計患者数は一千万人を超えるともいわれています。
本記事では ED(Erectile Dysfunction/勃起不全) の定義から発症メカニズム、セルフチェックの方法、薬物療法や生活改善まで、総合的に理解できるよう最新情報をまとめました。
原因を正しく見極め、最適な治療戦略を選択するための指針としてお役立てください。

EDとは何か

医学的には「満足のいく性交渉を行うために必要な硬度の勃起が得られない、あるいは維持できない状態が持続的または反復的に続くこと」を指します。
若年層にも起こりますが、加齢に伴う血管機能の低下や生活習慣病の合併によって五十代以降で有病率が顕著に上昇します。
自覚症状としては「朝勃ちの硬度低下」「挿入後に中折れ」「性欲はあるのに勃起しない」などが典型的で、三か月以上続く場合には専門医の受診が推奨されます。

早漏・遅漏・陰萎との違い

射精が早過ぎる早漏(Premature Ejaculation)や射精までに極端な時間を要する遅漏(Delayed Ejaculation)、性欲そのものが低下した陰萎(Impotence)は、いずれも男性機能不全の一種ですが、EDは「勃起の硬度と持続」に限定された障害です。
したがって診断基準や治療法が異なり、早漏治療薬やテストステロン補充だけでEDが解決するとは限りません。まずは症状の軸を正確に区別することが肝要です。

四つのタイプでわかる発症メカニズム

器質性ED

動脈硬化や糖尿病性神経障害、男性ホルモン低下症など、身体器官そのものの障害が原因となるタイプです。海綿体へ流れ込む血液量が不足したり、勃起指令を伝える神経が損傷すると、性的刺激があっても陰茎内圧が十分に高まりません。重症化すると朝勃ち自体が減少し、薬剤単独では改善しづらくなります。

心因性ED

性行為に対する不安や過去の失敗体験、パートナーとのコミュニケーション不足、仕事上のストレスなど、心理的要因が主導するタイプです。血管や神経に明らかな異常がなくても、脳が「性的快感より失敗の恐怖」を優先してしまうと自律神経が勃起を遮断します。年代を問わず発症しやすく、若年層のEDでは最も一般的です。

薬剤性ED

降圧薬や抗うつ薬、前立腺肥大症治療薬などが交感神経系やホルモンバランスに作用し、結果として勃起障害を招くケースです。服薬の開始や用量変更とタイミングを同じくして症状が現れる特徴があります。主治医と相談のうえで薬剤を変更したり、ED治療薬を併用して対処します。

混合性ED

血管老化やホルモン低下に心理的ストレスが加わるなど、複数の因子が重なり合って発症するタイプです。五十代後半から六十代で最も多く、単一の治療では効果が限定的になりやすいため、薬物療法・生活習慣改善・カウンセリングを並行して行う多角的アプローチが勧められます。

リスクを高める背景因子

メタボリックシンドロームに代表される内臓脂肪型肥満、慢性的な喫煙や多量飲酒、運動不足、高脂肪食といった生活習慣は、血管内皮で産生される一酸化窒素(NO)の量を減少させ、陰茎海綿体への血流を阻害します。

また糖尿病・高血圧・脂質異常症などの基礎疾患を放置すると動脈硬化が加速し、神経伝達にも悪影響を及ぼします。
心理面では長時間労働や人間関係の摩擦によりストレスホルモンが慢性的に分泌されると、テストステロン低下と血管収縮が同時に進行し、結果的にEDリスクが高まります。

さらに前述の薬剤性要因が加われば、勃起機能は多方向から圧迫されるため、日常的な健康管理が不可欠です。

セルフチェックのすすめ

自分の症状を客観視する第一歩として国際勃起機能スコア(IIEF‑5)と勃起硬度スケール(EHS)の二つが広く用いられています。IIEF‑5は過去六か月間の勃起状況を五つの設問で点数化し、二十一点以下なら何らかの勃起機能障害が疑われます。

一方EHSは勃起時の硬度をゼロから四まで五段階で自己評価し、グレード二以下は物理的挿入が困難なレベルと判断されます。いずれもオンラインで簡単に試せるため、医療機関を受診するかどうか迷った際の参考になります。

治療選択肢と効果を高めるコツ

PDE5阻害薬

現在世界的に第一選択となっている治療はシルデナフィル系のバイアグラ、バルデナフィル系のレビトラ、タダラフィル系のシアリスに代表されるPDE5阻害薬です。
シルデナフィルは摂取後三十分ほどで効き始め四〜五時間作用し、バルデナフィルは即効性と硬度確保に優れ、タダラフィルは最大三十六時間の持続効果で週末をカバーできる“ウィークエンドピル”として知られます。

後発医薬品としてカマグラ・ゴールドやパラディグラ、タダシップなどのジェネリックも流通しており、価格面でのハードルが下がっています。

生活習慣の最適化

薬物療法だけでは基盤となる血管機能が改善しなければ根本解決になりません。
有酸素運動を一週間あたり百五十分行うとNO産生が増え、勃起硬度が向上する報告があります。

食事面では地中海食に近い野菜・果物・オリーブオイル中心のメニューが動脈硬化を抑制し、禁煙を八週間続けるだけで陰茎血流が有意に改善したというデータもあります。
アルコールは赤ワイン一杯程度の適量に控え、睡眠は一晩七時間を目標に確保しましょう。

心理療法とカップルカウンセリング

心因性の比重が高いケースでは、認知行動療法やマインドフルネスによって“失敗への恐怖”を弱めると薬剤の効果が発現しやすくなります。パートナーと共有の時間を作り、互いの感情や期待値を言語化していくカップルカウンセリングも、性的満足度の向上に寄与します。

血管内治療とホルモン補充

動脈硬化が高度に進んだ重症例では、経口薬単独では十分な改善が得られないこともあります。
その際に選択肢となるのが、陰茎動脈再建術やカテーテルを用いた血管拡張術です。
狭窄した血管を物理的に広げ、海綿体へ送り込まれる血液量を取り戻すことで機能回復を図ります。
近年は低強度衝撃波治療(Li‑ESWT)という非外科的なアプローチも注目されています。
週に一度の照射を数週続けるだけで内皮細胞が活性化し、勃起硬度が自然に改善したという症例が増えています。

男性ホルモンの分泌が基準値を大きく下回っている場合には、テストステロン補充療法(TRT)を併用することで薬剤感受性が高まり、性欲そのものも向上します。
筋肉注射や皮膚ゲルで若年成人レベルの血中テストステロンを維持すると、うつ症状やメタボの改善にも波及効果が期待できます。

【まとめ】予後を左右するのは“継続と連携”

EDは単一の治療法で瞬時に完治する疾患ではありません。
薬物療法と生活習慣改善、そして心理的サポートを長期的かつ並行して続けることが、再発を防ぎ満足度を高める鍵になります。

糖尿病や高血圧といった基礎疾患の管理指標を定期的にチェックし、主治医と方針をすり合わせながら小刻みに軌道修正を加える姿勢が重要です。
パートナーと経過を共有し、互いの不安や期待を言語化するコミュニケーションも、心理的負担を軽減し治療成功率を押し上げます。

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